スリル・ミー X+1回目・2019年1月19日(土)15:30開演

元々、2019年1月19日(土) 19:00開演と2019年1月20日(日) 12:30開演の2回だけでチケット取れませんでしたが、すぐに追加公演が決まり、何とかチケットが取れました。

ミュージカル「スリル・ミー」【追加公演】|サンケイホールブリーゼ

1920年代シカゴで実際に起きた犯罪史上に残る事件。逮捕されたのは2人の天才だった・・・。
「私」と「彼」が熾烈な心理戦を繰り広げるサスペンス。ラストには予測不能な驚愕の事実が・・・!?(ブリーゼのサイトより)

 

「私」松下洸平×「彼」柿澤勇人

ピアノ:朴勝哲

原作・音楽・脚本:STEPHEN DOLGINOFF
演出:栗山民也
翻訳・訳詞:松田直行

 

舞台が始まる前、他の作品と違って少し早い段階で客席が静寂に包まれる。

これから待ち受ける100分間ノンストップの2人の応酬に身構えているみたいに。

そこからピアニストが登場し、プレリュード。

これから流れる様々な楽曲が少しずつ演奏される形。

初見ではないので、しんどい運命が待ち受けているのを知っているのに、ドキドキとワクワクが止まらない。

 

暗転。

53歳の「私」の仮釈放請求審理委員会。

34年前、19歳の「彼」と「私」が起こした誘拐殺人事件の真実を審理官に求められ、

静かに語り始める・・・。

 

この日は2階席だったので、「照明」と「2人の動きの対比」を楽しめました。

オリジナルキャストなので、超安心。

 

初見の人はネタバレをなんとか回避して、事前情報は、

「役者2人、ピアノだけ、100分間の1幕物」ぐらいに留めて、観てほしい作品。

 

(以下、思いっきりネタバレ含みながら勝手な解釈をするので、まだ見ていない人は読まないでほしいです。)

 

 

 

 

仮釈放請求審理委員会の場面と34年前の事件に至る過程の場面とが交互に繰り返されるので、ドキドキに緩急がつけられるので、面白い。

「私」は19歳と53歳を行ったり来たりしますが、声のトーンや動きなどで見事に演じ分けて下さる。

一応、「天窓」や「組まされた手」でもわかります。

 

「これこれ、この私を待っていた~」と思ったので、私の初見は多分、松下×小西だったと思われる。

(初見は衝撃的過ぎて、記憶があまりない・・・。)

 

最初は道具を用意させたり、ガソリンをもっとかけろという指示に素直に従ったり、警察の尋問に備えさせるのに応じるところから、「忠犬」な感じがするけれど、

取調室での裏切りに「あれ、なんだか雰囲気がおかしいかも」と思わされ始め、

拘置所の様子で「絶対何かおかしい」と違和感がほぼ確信になり、

刑務所への移送中に「眼鏡を落としたのはわざと」と告白する私に、「うわ!きた!これ!」と、これまで観ていたことを大逆転させられる。

 

理由なき殺人(スリルを求めて)が、「彼と一緒にいる為」(彼に支配されて言われるがままに共犯となった)と思い込まされていました。

でも実は、「彼と一緒にいる為」(人気者の彼を他の誰の手も届かない所に連れていくために誘導して共犯となった)。

同じ「彼と一緒にいる為」という言葉だけれども、意味合いが全然違う。

「私」が怖すぎる。

 

「あの1本のマッチが全ての始まりでした」(ニュアンスです)

その通りだけど、マッチを用意したのは「私」

冒頭、公園で久しぶりに再会する時に、マッチを持っていなくて、彼が火を目にすることがなかったら、こうはならなかったんだろうな。

高校の頃に資料室を一緒に燃やしているので、また「放火する」と言い出すのをわかっている。

放火から窃盗に代わり、エスカレートしていくのもわかっている。

「彼」が父親のところに盗みに入るのは止めるように誘導する。彼に動機があるので捕まった後の刑に差が出てしまうから。

「彼」が弟を殺そうと言い出して止めるのも同じ。

2人が同等の刑にならないと意味がないので、2人ともが見知らぬ相手である必要がある。

 

私が劇中に告白するように、世間であまり使っている人のいない高級品の眼鏡をわざと落とすことで捕まるようにしている。

それを知って観ていると、

脅迫状を書いている場面で「彼」が言う「完璧だ」は「脅迫状の内容」を指しているのが、

「私」が言う「完璧だ」は「読めないこと、つまり眼鏡を落としたこと、そしてそれに関心を払わない彼」を指しているように思える。

「彼」が「私」をちゃんと見て、「私」が眼鏡をなくした不安感を示していることにちゃんと向き合っていれば、事件がまだ明るみになっていない時点で眼鏡を探しに行くことになり、あの結末には辿り着けない。

でも、そうはならないことを、「私」はわかっている。

 

はぁ、しんどい。