RENT2017 1回目その1(一幕楽曲ピックアップ)
2017年8月17日(木)19時開演 森ノ宮ピロティホール
2012年、2015年に引き続き、オリジナル演出のマイケル・グライフによる新演出版。
オリジナル演出が大好きなのですが、それに近いこの演出も好きです。
(2008年、2010年のエリカ・シュミット演出版には下記の好きなポイントがかなりなかった・・・。)
まずは、楽曲ごとの好きなポイント。
と言いながらも、オープニング。
ロジャーだけが出てきて、ギターを少しかき鳴らすと、他のキャストたちが登場。
いよいよ始まるとワクワク。
”RENT” 全キャストが出演するパワーあふれる楽曲。
マークの「飛んだよ」から背筋がゾクゾク。舞台上からの音や圧力の本流に圧倒される。個々の細かい動きも気になる。この場面でミミとエンジェルがすれ違いざまににこやかに挨拶を交わしてて友人同士なのがわかり、ジョアンヌやマークの電話相手モーリーンも後ろ向きながらも、ちゃんと電話している。
”You Okay,Honey" エンジェルとコリンズが出会う楽曲。
暴漢に襲われたコリンズの膝の傷の手当てをしてあげようとエンジェルが手を伸ばすが、HIVキャリアのコリンズは感染しないよう、自分の手を間に入れて、少し下がって避ける。それに気づいたエンジェルが、「これからライフサポート(自助グループ、サポートグループ、分かち合いの会)に行く。後天性免疫不全症候群の。」と言い、自分も同じであることを伝え、「仲良くなれそう」とウキウキするのがかわいい。
”Light My Candle" ミミがロジャーと出会う楽曲。
火を借りにきたミミとロジャーがすぐに惹かれあうが、ロジャーは前の彼女が自殺したショックから抜け出せておらず、HIVキャリアなのもあり、新しい恋に臆病になっている。薬物依存症のサバイバーでもあるロジャーは、ミミの様子を見て、即座に薬物が切れてくると起こる離脱症状(以前の言い方だと禁断症状)が出ていると気づく。一旦立ち去ったミミが再び戻ってくるが、ローソクの火が既に消えていることなんかお構いなし。ドラッグを落としたのでそれに必死。ドラッグ>ローソクになっているので依存症なのがはっきりする。二人で探して、ロジャーが見つけ「キャンディの包み紙」と言ってズボンの右後ろのポケット隠し、ローソクの火を消し、テーブルに腰掛け、見つからないようにする。ここにミミを大切に思い、薬物から抜け出させたい気持ちが表れる。
薬物依存症状が強く出ているミミはロジャーの行動の意味に気づき、ダンスに誘ってロジャーを立たせる。少し踊って、ドラッグを取り返し、ロジャーを突き放す。この流れの一つ一つが面白い。
”Today For You" ドラァグクイーンであるエンジェル本領発揮。
歌とダンスのキレが良いととっても楽しい。キャストの力量が問われる。どっちかのキレが悪いともう大変。物語の主題「愛」の象徴であり、愛されキャラであるエンジェルが一番表現されるので、この曲の出来が作品の出来を左右すると言っても過言ではない。一番楽しみな反面、ある意味一番怖い曲。
"Tango Maureen" モーリーンの今の恋人ジョアンヌと元の恋人マークのやり取り。
ジョアンヌがモーリーンのステージ設営中。ディレイマシンが壊れ、ジョアンヌには直せない。モーリーンに修理を頼まれたマークが登場。前の恋人を平気で呼ぶモーリーンにジョアンヌはイライラ。「それがモーリーンでしょ」と言い、モーリーンに振り回された経験をマークが語り、ジョアンヌが最初は否定しながらも思い当たるふしを徐々に思い出す。「キスで誤魔化すでしょ。プーキーと呼ばれるでしょ。」と言うマーク。ジョアンヌは「キスは確かに・・・。でもプーキーと呼ばれたことはない!」と信じたい。ディレイマシンが直り、そこにモーリーンからの電話。ジョアンヌが出て「プーキー」と呼ばれる。ウシシと笑うマーク。
"Out Tonight" ミミのソロ。魅惑的。
ロジャーを誘うミミが魅力的。途中、髪を振り乱して、銀の粉が舞う。ティンカーベルのオマージュかな(信じる心と魔法の粉があれば飛べる)。その後、弱音もこぼれだすけど、それを振り切って楽しもうと誘いかけるところが良い。
"Another Day" 上の楽曲を受けてのロジャーの返事。
すれ違い。断っていて、揺れ動いているけど、ロジャーの気持ちは一つ。ミミに惹かれている。断りながらも、手や指の動きがミミを愛おしんでいる。ドラッグに溺れている
のを非難しているけど、そこしか否定するポイントがないだけ。机の上から誘いかけるミミ、上から他キャストも「今日を生きよう」と声を合わせるところが大好き。
"I'll Cover You" エンジェル&コリンズの恋愛最高潮。
ライフサポート帰り。マークと分かれ、エンジェルとコリンズが二人きり。幸せいっぱい。エンジェルの「Noなんて言わせない」がかわいい。
"Christmas Bells" アンサンブル含め、すべてのキャストが登場する楽曲。
ロジャーはミミに断ったことを謝り、改めて食事に誘う。マークはロジャーと一緒にいて、ミミを紹介してもらう。エンジェルとコリンズはマーケットでコリンズのコートを見繕っている。ベニーは電話で妻のアリソンにモーリーンの抗議集会がとうとう開催されることになったことを告げている。アンサンブルキャストはマーケットの物売りになったり、薬物依存症者になったり。ラスト、「ジョアンヌ、ステージはどっち?」とモーリーンが颯爽とセンターに登場。ヘルメットと上着をジョアンヌにバンッと手渡す。とてもかっこよく決まるので、初見時はここで一幕終わりと思った。
"Over The Moon" モーリーンのパフォーマンス。
足でスイッチを踏んで映像を切り替えながらの抗議パフォーマンス。ミルクの飲み方とベニーの物真似が楽しい。抗議活動として座り込んでムー(牛の鳴き声)を提案し、集会参加者(客席)を煽る。コーラス&その他サポートのジョアンヌが、タンゴ・モーリーン以降ひっかかりを感じているので、微妙に息が合わない。
"La Vie Boheme / I Should Tell You" モーリーンのパフォーマンスの打ち上げ。
ライフカフェで打ち上げするが、抗議対象のベニーとミスター・グレイも店に来ている。ベニーの挑発的な発言に、様々な表現・パフォーマンスで反論するのが面白い。モーリーンのお尻w ジョアンヌは撤収作業をして遅れてライフカフェへ。モーリーン&ジョアンヌ、エンジェル&コリンズの2カップルは、ミスター・グレイに同性愛・両性愛見せつける。ジョアンヌはモーリーンに「あの片付けは?」と言われ渋々戻る。その後も皆の表現は止まらない。ウェイターまでもマリファナを吸い始め、ベニーはウェイターを追いかけまわす。ロジャーはミミを誘ったものの上手く話せない。そこにHIVの薬服用時間を報せるアラームが鳴った瞬間、二人は共に相手もHIVキャリアと知り、ロジャーが作っていた壁が消える。二人で抜け出すのを見つけたマークが二人のコートを手渡すところが好き。傍観者たるマークだからこそできる優しさ。モーリーンはジョアンヌがいない隙に他の女の子とイチャイチャ。再び戻ってきたジョアンヌはその後の広場の様子「警察がなだれこんだけど、皆座ってムームー言ってるだけなの!」と抗議活動の成功を告げ、モーリーンには荷物をまとめて出ていくように伝える。
「メインストリーム(主流)から外れた人たちへ」と告げながら、「全部が全部メインストリームの人なんていない!戦争の反対は平和じゃない、創造だ!自由な人生万歳!」
(この曲で手拍子するのはなんか違うと思いながらも、これが日本式だと考えて手拍子)
長くなったので以降は次回に。
<キャスト>
マーク 村井良太
ロジャー 堂珍嘉邦(Wキャスト)
ミミ 青野紗穂(Wキャスト)
コリンズ 光永泰一朗
エンジェル 平間壮一(Wキャスト)
モーリーン 上木彩矢(Wキャスト)
ベニー NALAW
ゴードン他 新井俊一
アレクシー他 千葉直生
ミセス・コーエン他 小林由佳
ミセス・ジェファーソン他 MARU
ミスター・ジェファーソン他 奈良木浚赫
ミスター・グレイ他 岡本悠紀
スウィング 長尾哲平
公式ホームページ
<スタッフ>
演出 マイケル・グライフ MICHAEL GREIF
日本版リステージ アンディ・セニョールJr. ANDY SENOR JR.
訳詞 吉元由美
音楽監督 佐藤真吾